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言いたい放題


by pussochkram85

ランダム。

たまに必要な、たまった言葉を吐き出す作業です。
僕の脳に浮かぶ世界の切れ端。
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「社会不適格者のつぶやき」

マグノリアの季節になった。
淡いピンクをごてごてと咲かせている桜より、
輪郭をはっきりと捉えて一つで凛と咲くマグノリアのほうが、僕は好きだ。

授業で、テストで拷問と人権問題の関連性に触れる際にプラトーの理論を含めるべきかを
しつこく聞いていた女の顔を思い出して、胸糞悪くなる。
プラトーとか、ほんとどうでもいい。

マグノリアの季節になって、
卵の黄身みたいな色をした光が、さっと部屋に差し込む。
舞い上がったホコリが、光を受けて空気にちりばめられる。
ぼんやりとした頭で、それを捕まえようとして、ゆっくりと手を伸ばす。
キラキラ。キラキラ。
待ってましたと、斧を持ったウサギがやってきて、
私のシナプスをぷつり、ぷつりと断ち切っていく。
それが必要な作業であるかのように、おごそかに、厳粛に。
つながっていたシナプスが一つずつ切れていく音が耳に残って、
ざらざらとした苦い感触は、脳から神経を通じて体中を駆け巡る。
私は、ゆっくりとまぶたを閉じて、そしてあのプラトーの女を思い出す。

「君は逃げられないよ」
手首をつかまれた感触が暖かく残る。
お日様の下で干した布団のにおいがする男に会った。
人類最後の小さな希望ですらも踏みにじってしまえるほどに残虐で、
そしてそれがとても肉欲的な男だ。
そのまま引っ張ってくれればいい。そうすれば僕は、あなたの腕に
すっぽりと収まる。

貪欲に暗闇の底をまさぐり、拾い尽くそうとするその眼が、手が、唇が。
斧を持つ白い手と、ふさふさした毛と、真っ赤な眼に変わる。
ぷつり、ぷつり。

「ほら、こうして逃げればいい」

ぐいっと引っ張る手についていく先には、猥雑な街。
くねくねと曲がりくねった細い路地を中心にして、
小さな飲み屋や、ファーストフードの店や、コンビニや、
病院、学校がうっそうと生え茂る。
私は手を引かれながら、その一貫した無秩序に見惚れる。

何かの肉の焼ける匂いが漂う街を、日干し布団のにおいの男が導く。
土壁にオレンジの塗料を塗った粗末な家に、
鉄の檻があった。
がちゃんと閉められた扉に、男はもたれかかって笑った。
私を見て、笑った。
それが優しすぎて、泣けた。

檻の中にうずもれるのは、獣の肉。
爽快なほどに山と積まれたその肉を、
引き摺り下ろして眺める。
ぷつり、ぷつり。
柔らかな赤い繊維に、かりりと歯を立てる。
ずぶずぶと歯が肉に埋まっていく。
耳に残るのは、男の笑顔の音。

マグノリアの季節になった。
僕の手は相変わらず血まみれで、
檻の中でむさぼった骨の数を数え続ける。
プラトーの女をたまに思い出して吐いて、
ウサギの眼が迎えに来るのを、
ひたすら待ち構えている。
by pussochkram85 | 2010-04-20 06:43 | 明るめ・落ち着きめ